confront デザイナー
どんなものを求めているのか
思いを具現化してデザインに落とし込む
高校卒業後は、車が好きだったので、自動車の専門学校に通っていました。1年ぐらい過ぎて、何かが違うと思うようになってしまって。そんな時、以前から少し興味があったので、店舗デザインをしていた父の仕事を見せてもらったんです。父の仕事を眺めていたら、何だかとてもワクワクしてきて。自分も同じ道に進みたいと強く思うようになりました。そこで心が決まったので、車の専門学校を辞めてインテリアデザインの専門学校に進学。卒業後は、念願の東京のデザイン事務所に就職が決まり、今の自分が東京で通用するんだと就職する前から満足していましたね。しかし、よくよく考えてみると、デザインの前に、もっと現場のことを学ぶべきではないかと思うようになったのです。
たいていの場合、デザイン事務所はデザインしかしません。施工はしないので、施工は専門の会社に依頼します。よく聞く話なのですが、デザイン会社と施工会社が打ち合わせをする時、建物の構造上、施工できないデザインをしてしまう場合があるのです。壁や床の構造を知らずに、表層的なところだけでデザインするとこうなってしまう。だからこそ、現場(施工)のことをもっと勉強して、壁の中の構造を理解したうえで、実用性を兼ね備えた空間をつくりたいと思うようになりました。現場と密になれる会社を探していた時、バイト先の店舗デザインの事務所で施工業者として来ていた工事部の湯川さんと知り合い、この会社で働くことになりました。時には施工の手伝いをすることもありますし、わからないことがあれば、すぐに現場のアイデアや意見を聞きます。例えば、ちょっと変わった壁にしたいときや、補強の金具を壁の中に隠したいときなど、どうしたらいいのか現場の人間に聞いたら即解決。実現可能で確実なデザインができあがります。
デザインは、あくまでオーナーさんあってのデザインです。オーナーさんとの対話からしか生まれません。オーナーさんがどんな店をつくりたいのか。どんなものを求めているのかをきちんと知って、とにかくそのイメージを共有することが一番大切です。最近、六本松のバーバーを手掛けたんですが、オーナーさんは独立して初めてのお店。ちょっと高級志向で単価が高めで、オシャレで男らしい空間。見た目バーバーぽくなく、今までのバーバーにない雰囲気の店にしたいという思いがありました。実際の現場と照らし合わせていきながら、言葉だけの対話で、オーナーさんの思いをデザインに落とし込んでいく。オーナーさんの話を聞きながら、ちょっと武骨で、荒々しいイメージかなと思って、それをデザインしたところ、「イメージ通り!」と1発でOKが出ました。そのデザインをベースにして、壁の色を変えたり、棚を付け加えたり外したりと、約2カ月で最終デザインが完成しました。施工も済み、実際にできあがった空間をオーナーさんが見て「かっこいいね」と言ってくださった時は、本当に嬉しかったです。時々用事があってお店に行くのですが、「お客さんによく来てもらっているよ」という話を聞いて、さらに嬉しくなりますね。しかも、隣のオーナーさんがデザインを気に入ってくださり、ちょっとしたリフォームを頼んでくださったんですよ。本当に、この仕事にやりがいを感じます。
休みの日には、散歩をよくします。街中も散歩しますが、自然の中を散歩するほうがおもしろいですね。いろんな葉っぱや木を眺めていると、思いもよらないラインや模様などがあって、自然から得ることが大きいです。いろんなものを見て吸収して、とにかく今はデザインに対して貪欲でいようと思います。やりたいことを全部やらせてもらえる会社なので、どんどん新しいことにもチャレンジしていきたいです。福岡にはたくさんオシャレなお店があります。その中でも、いい意味で飛び抜けた店舗をつくっていきたいです。店舗だけでなく住宅にも挑戦したいですね。自分は基本的にスッキリとしたモダンクールなデザインが得意なので、もっと磨きをかけなければ。自分が手掛けた店が点々といろんな場所にあって、それが街の顔となり個性となり、そこに人が集まり活性化していくような、大きな意味で街が成り立つような仕事をしていくのが、将来の大きな夢です。
デザインをする上で、一番大切なことは、お客様の思いをしっかりとお伺いすることです。「温かみのある店をつくりたい!」「シンプルでスタイリッシュな店にしたい!」「こんな気持ちで、お店をはじめようと思いました」。まずは、しっかりと思いの丈を聞いていきます。お客様の思いを共有することが、デザインの第一歩です。
お客様のお話を聞いて、デザイナーのイメージが固まったら、デザインに起こします。そのデザインが、お客様のイメージに1度でぴったり合うこともあれば、異なることもあります。ピタッとイメージがあったら、そのデザインをベースに、窓や棚の位置、壁や床の色など細かいところを修正していきます。「これで、行きましょう!」とお客様に満足いただいたら、デザインは、完成です。
実際の物件の床や壁の構造を理解していなければ、デザインしても、実現できない場合があります。現場の人間の意見やアドバイスをしっかりと聞きながら、実現可能なデザインをしていきますので、お客様のご希望を確実に叶えることができるのです。